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第19期奨学生の留学体験レポート

 

パリ留学 中川稜介 様

 

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宿舎1階の様子。手前にはサッカーゲーム、左手奥にはバーがある。

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宿舎のテラス。日中は食事を楽しむ人で賑わう。

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宿テラス奥にある卓球台。右奥の2人はパリ・ラングの講師の方々。

研修地について

研修地(宿泊施設)は、語学学校に併設されているFIAPを選択しました。施設の充実もさることながら、やはり学校が建物のすぐ地下にあるという点が最大の決め手となりました。行ってみてから分かったことですが、内装がとにかく綺麗でお洒落だったことが印象的でした。ちなみにパリ・ラングに通っている他の日本人の方々の中にはメトロで数駅離れたホテルや学生寮、アパルトマンに住んでいる人もいましたが、ほとんどはFIAPに滞在していたようです。
設備面ですが、着いた頃から1ヶ月程は全ての客室の改装工事の最中で、そんな中私たちは運良く、工事が終わって間もない非常に清潔感ある綺麗な部屋に宿泊することができました。ドライヤーも部屋に常設されていたりと充実していましたが、工事が終わっていない階に宿泊していた友人は不便だと言っていました(現在、工事は終わっている模様です)。


洗濯は宿舎地下のコインランドリーを使用しました。洗濯・乾燥合わせて6.5ユーロと少々高めではありましたが建物内にある利便性には敵いませんでした。
宿舎内のカフェテリアでの食事は、極端に口に合わないといった料理もなく楽しく食事を取ることが出来ました。主食、メイン、サラダ、デザート、ドリンクから1品ずつ選ぶ形式で、主食には時々お米が出ることもありました。余談ですが、日本食が恋しいという時期はやはり訪れるものではあります。着いて間もない頃は度々私もそう思うときがありましたが、慣れてしまうとそこまで気にならなくなるものでした(あくまで個人的意見ですが)。どうしても、という場合はメトロ7番線のオペラ駅周辺の日本人街がおすすめです。日本料理が食べられたり日本製品が購入出来たりと、ふと日本食が恋しい時には非常に助かるありがたい区域でした。


またFIAPにはサッカーゲームと卓球(地下と屋外)という娯楽施設があるのも一つの魅力でした。というのも、内輪でやっているとほぼ毎回FIAPに宿泊している外国人も混じってプレーしその後友人になることが頻繁にあったためです。

 

 

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パリ・ラングの廊下。

研修校について

パリ・ラングでは基本的に授業は平日のみ(希望者のみ土曜に文法の授業を受講できる模様)で午前に3時間行われています。火~金は9~12時ですが、月曜のみ10~13時となっています。というのは、月曜日は毎週新しい受講生が入ってくる曜日で、彼らのクラス分けテストが月曜9時に行われるのです。そのクラス分けテストですが、出発前にパリ・ラングに提出したテストとほぼ同じ形式の文法中心のテストで、普段からしっかり基礎を勉強していれば何も問題なくこなせるでしょう。
クラスはレベル別におよそ4、5段階に分けられており、下のクラスは文法中心でクラスが上がるほど会話の頻度が増え、また扱うテーマも社会問題であったりというように、より高度な語彙のフランス語を駆使する授業が展開されていました。
受講生の国籍は本当に様々で、覚えているだけでも10カ国以上はゆうに超えています。中でもイタリア人が特に多かった印象を受けました。
講師の方々も、人柄から年齢層、教え方まで本当に様々な先生が多く在籍していらっしゃいました。
授業の具体的な内容ですが、文法の暗記、練習問題や2人1組での会話で実践というように、大方は日本の大学でやるような事と特別変わりはありませんでした(大学でフランス語を履修している方ならイメージし易いと思います)。ただ当然のことながら、授業内での先生とのやり取りからちょっとした雑談まで全てをフランス語で話さなければいけないため、最初は「頭では単語が分かっていてもとっさに口に出ない、文を構成するのに時間がかかる」という葛藤に悩まされることになると思います。とにかく耳をネイティブのフランス語に早く慣れさせること、そして語彙力の重要性というものを痛感しました。

 

 

滞在について(観光など)

8週間の滞在ということもあり凱旋門やエッフェル塔、ルーブル美術館をはじめとする多く有名観光地に訪れ、よりフランスを肌で感じることが出来ました。また日本でも非常に有名なこれらの観光地以外にも、約400万人分の人骨が納められているという地下洞窟「カタコンブ」や、現代芸術の独創性と自由さを如何なく発揮したアーティスティックかつシュールな世界観が魅力の「ポンピドゥーセンター」、更にはサッカー国際親善試合として、フランスVSスペインの観戦など、多方面でフランス文化に触れる機会があったことに非常に満足しています。

 

 

今回の留学で学んだこと・感じたことなど

私自身初めての海外ということもあり、当初はかなりの不安と緊張で精神的に疲れてしまった時期もありましたが、振り返ってみるとその全ての経験が貴重な財産であったということを日本にいる今現在、改めて日々感じております。中でも強烈に残っている事は、「言語の壁の低さ」と「同世代の外国人の主張する姿勢と社会への関心・知識」です。
最初の事に関して言いますと、大学で3年弱フランス語を勉強してきて果たしてとっさに会話が出来るのだろうかという不安が出発前は非常に大きかったが為に、言語の壁の高さという偏見を拭えないまま持ち続けていました。事実最初の1、2週間は聞き取ることで精一杯になっていることがしばしばありました。が、期間を経ると人間不思議と順応してしまうもので、ある程度易しいものならば、耳が自然とフランス語を聞き取り頭の中で文を組立て、内容を理解できるレベルにまで自然と到達していました。また必要な語彙がとっさに思い出せなくても英語で代用したり、表情の変化やジェスチャーでコミュニケーションは充分に可能であることがはっきりと分かりました。

そして2つ目ですが、そもそもパリ・ラングで同じ授業を受けている周りの大学生のレベルが圧倒的に高い(同じクラスにハーバード大学、オックスフォード大学、プリンストン大学の学生が在籍していた)という事や彼らの根幹にある国民性といった理由から、彼らの政治・経済・社会への関心が日本人と比較して圧倒的に高いことも明瞭でした。ある授業で、「日本の福島原子力発電所についてどう思うか?解決策はあるのか?」という日本人でも難しい社会問題に関して最も多く喋り的を得た発言をしていたのは日本人ではなく同じクラスの1歳違いのパキスタン人の大学生でした。また別の授業では、「自国の医療制度について利点欠点を述べよ」というテーマで私を含む日本人の学生は全員言葉に詰まっている中、自身の冷静な分析も伴って、明確な説明を流暢なフランス語で話して見せたのは同い年のアメリカ人の大学生でした。
またそうした大学のレベルや職業、各々のフランス語の出来に関係なくヨーロッパ語圏の人々が強く主張する姿勢というのは本当に印象的でした。考えてみれば発音の差異はあれど、同じ26文字のアルファベットを用いている母国語を有している訳ですから、いくら発音を無視したり母国語訛りのフランス語であっても「通じない」ということはまず起こりえないのです。加えて、英語が使えて当たり前という大前提もありますので、多少のニュアンスの違いくらいはあるかもしれませんが、そもそも彼らは「言語の壁」を感じることや、言葉が通じないという状況に陥ることなどほぼ有り得ないというわけです。故に、己のフランス語(とりわけ文法と発音)がいかに未完成であっても意見を述べよと言われれば彼らはいくらでも言葉が出てくるのです。
ここまでで既にお分かりかと思いますが、日本人にとってこれらの大前提がどれだけ高い壁であるかをヨーロッパ圏の人々にうまく理解してもらえないこと、そしてその理由として、頭の中では文法・発音が完璧(これは日本大学の外国語教育の大きなデメリット)でもフランス語や英語とまるで似ていない難解で複雑な母語を有する独立した島民である我々にとっては言葉の代替も効かないという障害があるということ。こういった事情が背景にあるが為に、上手く主張出来ないで黙ってしまうことも少なくはなく、またその様を見て「日本人は本当に控えめな民族だ」などと揶揄されることが不甲斐なく感じることも多々ありました。
かれこれ10年以上前から日本国内で叫ばれている「国際化」ひいては「日本は世界に遅れをとっている」といった旨の決まり文句ですが、「日本人の若者の政治・経済・社会への関心の少なさ」「ヨーロッパ語圏への免疫の圧倒的な少なさ」を身をもって体感した私はようやく、その言葉の意味と危機感を真に理解しました。フランス文学専攻の学生として一芸を極めることは当然のことではありますが、真に通用する国際人になるためには、こうした事情をも理解した上で望まなければと緊張感を持って、今現在語学の勉強に励んでおります。新しい友人作りや観光など楽で楽しいことばかりの2ヶ月間でなかったことは今、私にとって大変貴重で、今後の人生においても重要な意味を持つ大きな財産となっています。